愛媛県松山市の糖尿病専門クリニック 院長 西田亙Nishida Wataru Diabetes Clinic

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【院長YouTube新作】歯科衛生士国家試験から学ぶ糖尿病のポイント


YouTube ドクターにしだの体なるほどチャンネル:歯科衛生士国家試験から学ぶ糖尿病のポイント

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令和6年6月から、内科医や糖尿病専門医は糖尿病の患者さんを診察・指導するにあたり、「歯科受診を勧める」ことが義務付けられました。その背景を簡単に説明しますと、まず日本歯周病学会と日本糖尿病学会は「歯周病と糖尿病の双方向のつながり」に関する科学的根拠に基づき、「2型糖尿病の患者さんには歯周病治療を勧める」ことをガイドラインに明記しました。

国は両学会のガイドラインを重要視し、糖尿病患者さんの重症化予防の一助として、歯周病の診断・治療・管理を効果的に実施するために、令和6年6月から施行された診療報酬改定において糖尿病患者さんに対する生活習慣病管理料の算定要件として、「歯科受診勧奨」を行うことを全国の医師に求めたのです。

私の試算では、この改定により日本全国で「毎月250万人を超える糖尿病の患者さん」に対して、医師が歯医者さんでの歯周病治療を勧めることになります。

歯科の皆様にとっては天から降って湧いたような話であり、にわかには信じがたいことかと思います。しかし、学会や国は長い間にわたって世界中で積み重ねられてきた科学的根拠に基づいて、このような判断をくだしたのです。今回の改定内容は、15年前から医科歯科連携・歯科医科連携に取り組んできたこの私ですら、思わず目を疑うほどのものでしたが、冷静に考えれば国の判断は極めて正しく、また世界一先進的であると言えるでしょう。

さて、ここからが本題です。糖尿病診療ガイドラインを読めばわかりますが、日本糖尿病学会が歯周治療に期待しているのは「炎症消退」です。「歯周基本治療」により、歯肉の炎症、歯周組織の炎症が治まることで、全身への炎症波及が静まり、結果として糖代謝が改善することを日本糖尿病学会は高く評価しているのです。

歯周外科治療ではなく歯周基本治療である点に注目してください。すなわち、糖尿病の重症化予防の旗手として期待されているのは、日本全国の「歯科衛生士」の皆様なのです。

現役の歯科衛生士さん、そして歯科衛生士学校の生徒さんにとって、これほど嬉しくまた栄誉なことはないのではないでしょうか?

「令和の歯科衛生士」の皆様には、学会と国、そして国民からの期待にこたえる義務があると私は思います。ならば、これまで学校教育や卒後教育であまり触れられてこなかった「糖尿病」について、改めて学び直す必要があります。

しかし、糖尿病専門医の私の目から見ても、糖尿病はあまりに巨大で習得が難しい疾患です。これは、私達医師や看護師など医科スタッフにおいても同様で、歯周病をゼロから勉強するとなると、途方に暮れてしまいます。自分の専門とは違う、他分野の勉強ほど難しいことはありません。

私はこれまで愛媛県の歯科衛生士さん向けに地域糖尿病療養指導士受験対策の勉強会をシリーズで開催してきた経験もありますが、振り返ってみますと、あまりに広範囲かつ分量が多すぎ、チェアサイドで必要とされる肝心なポイントが抜け落ちていたな…と、深く反省しています。

その後、色々考えたのですが、私が到達した結論は「まずは歯科衛生士国家試験の過去問を題材にして、国が要求する最低限の糖尿病の知識を身につける」というものです。早速、過去問10年分を取り寄せて調べたところ、糖尿病に関連する出題は合計「19題」ありました。これは、歯科衛生士国家試験問題群の約1%に相当する分量であり、主題範囲の広さを考えると、国が歯科衛生士教育において糖尿病を重要視していることがよくわかります。

しかも、それらの問題は糖尿病専門医の目から見ても「良問」揃いです。確かに「チェアサイドにおいて、最低限これは知っておいてほしい!」という内容ばかりなのです。私もそうでしたが、まだ臨床経験を持たない受験生の目に国家試験問題は無味乾燥に映るものです。そんな一見つまらない国家試験問題にスポットライトを当て、問題の意図や選択肢に隠された出題者の考えなどを深読みしつつ、国家試験問題だけでは足りない臨床の勘所も合わせて紹介するビデオをYouTubeで公開しました。

全国の歯科衛生士さん、歯科衛生士学校の学生さんのお役に立てましたら幸いです。

にしだわたる糖尿病内科 院長 西田亙 (2024.9.30)