東京にて
2月9日から10日は、研究会参加のため東京にやってきました。10日の朝は五月晴れ、美しい青空と皇居に目が癒やされます。
研究会終了後、フライトまでの空いた時間をぬって、銀座までやって参りました。お目当ては、フェルメール・センター銀座で開催されている”あっぱれ北斎!光の王国展”。葛飾北斎の手になる、「冨嶽三十六景」46点と「諸国瀧廻り」8点のレプリカが一同に展示されていると聞き、やってきた次第。
原寸大や拡大したものなど、大小様々なコピーが額縁に入れられて展示されています。入館前は精緻なレプリカを期待していたのですが、どうもこの企画は色調再現に重きを置いているようで、版画の命ともいえる”線”は、ぼんやりとにじみ、画に締まりがありません。
せめて、一枚でもオリジナルを展示し、味わいの違いを比較してほしかったと思います。若かりし頃、ヨーロッパで歌川国芳の版画展覧会を見たことがありますが、あの感動は今でも忘れられません。
少し残念な面持ちで歩行者天国に出てみると、どこからともなく、かすかな鈴の音が聞こえます。糸のように細い音色をたどっていくと、一人の托鉢僧が静かに立っておられました。
都会の喧噪の中、そこだけ時間が止まっているような、不思議な光景。人通りも多く、少し気恥ずかしかったのですが、御布施をし、読経して頂きました。お声はよく聞き取れませんでしたが、一瞬雑踏のざわめきが消え入ったような気がします。
静かなお姿を写真に納め、東京を後にしました。