クリニックの本棚

暖炉の上の本棚

暖炉の上に、小さな本棚を作ってみました。まだ数は少ないですが、すべて院長の趣味で選んでいます。健康に関するものが多いですが、中には写真集なども。

これから、書評をつけながら一冊一冊をご紹介したいと思います。

謹賀新年

明けましておめでとうございます。にしだわたる糖尿病内科も、お陰様で昨年8月をもちまして3年目を迎えることができました。本年も、スタッフと共に「敬意と共感」を大切にした診療を心がけて参りたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 

心に貯金をして帰す

先日、徳島市でのご講演を拝聴して以来、私はすっかり岡崎好秀先生のファンになってしまいました。先生のホームページを拝見していたところ、素敵な診療哲学を発見。「心に貯金をして帰す」という言葉です。

岡崎先生によれば、歯科医院を訪れた子どもを泣き顔で帰らせることを「心に借金させる」とし、笑顔で”先生、またね!”と帰らせることを「心に貯金をしてもらう」と捉えるのだそうです。

これは、岡山大学小児歯科時代からの伝統ということで、先生若かりし頃は、同級生とお昼ご飯をかけて、どちらがより多くの子どもを泣かせずに帰らせることができるか、ひたすら修行を重ねられたのだとか。

思えば、私自身も歯科医院での小さい頃の怖い記憶を引きずりながら、人生50年近くを過ごしてしまったような気がします。完全な「心に借金」タイプですね。

けれど、よくよく考えてみれば、これは高い普遍性をもつお話であり、糖尿病診療にもそのまま当てはまるように思います。

先生のスライドにある、”患者の眼”と”歯科医の眼”の対比が面白いですが、医師には糖尿病患者さんの顔が「HbA1c」に見えているのかもしれません。

岡崎先生によれば、「予防というと、むし歯や歯周病の予防を思い浮かべるだろうが、泣きの予防も立派な予防である」ということ。大人であっても、糖尿病外来が終わった後、心の中で泣きながら帰途につく方がいらっしゃるかもしれません。

“心の貯金と泣きの予防”、健康に関わる者すべてに、深く深く響く言葉ではないでしょうか。

愛媛県歯科医師会より感謝状授与

本日は愛媛県歯科医師会館において、デンタルフォーラムが開催されました。愛媛県歯科医師会の重鎮の方々が集われる、いわゆる総会です。

そのデンタルフォーラムの最後に、清水恵太会長から感謝状を頂きました。漠然と「何かある」とは伺っていたのですが、私にとってはほとんどサプライズの出来事。

会長より、ケース入りの立派な感謝状を賜り、皆さんの前で急遽ご挨拶することに・・。

思い起こせば、歯科医師会の先生方と出会ったのは、今から4年半前。いい歯の日(11月8日)講演会の講師としてお招き頂いたことが、全ての始まりでした。以来、清水会長のご理解のもと、学術担当理事の原瀬忠広先生や、多くの先生方と共に、”歯科と医科のつながり”を目指して活動して参りました。

当時、歯科医院で血糖を計ることは、ある種のタブーとも言えるほどのことでした。しかし、愛媛県で始まった歯科医院での血糖測定は、今や日本全国に広まりつつあります。

また、5年近くの間には数多くの講演を行って来ましたが、糖尿病に興味を持たれた志の高い歯科衛生士さん達が、愛媛県で初めて糖尿病療養指導士に挑戦されるほどになりました。歯科医師会主催で年5回の勉強会を開催し、去年今年と合計6名の方が、見事厳しい試験に合格されています。

このような活動が認められたのでしょうか、昨年から始まった日本糖尿病協会主催の療養指導学術集会・歯科医科連携の部門において、私と原瀬先生はリーダーとして参加させて頂いています。

いずれも、5年前には考えもつかなかったことです。

早速、頂いた感謝状をクリニックに飾らせて頂きました。この文言に恥じることがないよう、歯科の先生方と共に、”口から広がる健幸”を世に伝えて行きたいと思います。

九度山托鉢行と研修医

先日届いた高野山教報6月15日号に、”九度山托鉢行”と題する記事が掲載されていました。冒頭では、次のように紹介されています。

「高野山専修学院では、毎年五月に高野山の麓、九度山町で一軒一軒のお宅を巡って先祖供養と、ご家族の無病息災を祈る托鉢行を行っています。九度山町の方は、入学したばかりの院生たちに真心で接して下さいます。その温かさを受け、院生たちは次のステップに向けて思いを新たにしました。」

記事には、いくつか写真が添えられていたのですが、その中の一枚に私のハートは鷲掴み・・。

お坊さん見習いふたりによる読経の先に鎮座しているのは、おばあちゃんでもおじいちゃんでもありません。手作りの鯉のぼりの下に、双子でしょうか?可愛いお子さんがふたり、きれいに正座し手を合わせ、真っ直ぐな瞳を袈裟姿の院生に向けています。

なんという胸キュンの写真!個人的にはピュリッツァー賞ものだと思います。今の日本にこのような情景が残っていることに、驚き、救われた思いがすると同時に、深く反省。

“果たして自分は、この子供たちのように純粋かつ素直な祈りの姿で、他者を迎え入れることが出来るのだろうか?”院生の皆さんも、同様の思いを持たれたようで、感想文の中からひとつをご紹介します。

「初めて人前で読経するのは、非常に緊張しました。托鉢行中に九度山の皆さまから頂いた心のこもった言葉は驚きを隠せませんでした。修行僧とはいえ、一人前の僧侶としても接して下さいました。今の日本では、考えられないことだと思います。一軒読経が終わればまた次の方と、隣でお待ち頂いていたことは、本当に有り難いことでした。日々、寮監先生から頂いているご指導が改めて心に染みて来ました。御大師さまも、きっと九度山で托鉢をされたのだと思うと、嬉しさもこみあげて来ました。現在世の中では、人と人との繋がりがない中、改めてその繋がりの大切さ、人の思いやりと心の温かさを感じる行でした。貴重な体験をさせて頂きました皆さまに改めて感謝申し上げます。」

こうしてみると、つくづく医師の世界によく似ているなと思います。医学生もまた、講義室で学んだことを大学病院の臨床実習を通して実体験していきます。教科書ではなく、患者さんの胸を借りて。そしてまた医学部を卒業した後も、研修医は患者さんに育てられていくのです。

その意味で、ここ愛媛は九度山に負けず劣らず、真心に溢れたところでしょう。

考えてみれば、日頃の外来もこの写真と同じなのかもしれません。私の姿は見習いの修行僧に重なり、診察室で座られる方は、正座して読経に聴き入る子ども達の姿。

ずっと机の前に貼っておきたい・・そんな素敵な写真です。