心に貯金をして帰す
先日、徳島市でのご講演を拝聴して以来、私はすっかり岡崎好秀先生のファンになってしまいました。先生のホームページを拝見していたところ、素敵な診療哲学を発見。「心に貯金をして帰す」という言葉です。
岡崎先生によれば、歯科医院を訪れた子どもを泣き顔で帰らせることを「心に借金させる」とし、笑顔で”先生、またね!”と帰らせることを「心に貯金をしてもらう」と捉えるのだそうです。
これは、岡山大学小児歯科時代からの伝統ということで、先生若かりし頃は、同級生とお昼ご飯をかけて、どちらがより多くの子どもを泣かせずに帰らせることができるか、ひたすら修行を重ねられたのだとか。
思えば、私自身も歯科医院での小さい頃の怖い記憶を引きずりながら、人生50年近くを過ごしてしまったような気がします。完全な「心に借金」タイプですね。
けれど、よくよく考えてみれば、これは高い普遍性をもつお話であり、糖尿病診療にもそのまま当てはまるように思います。
先生のスライドにある、”患者の眼”と”歯科医の眼”の対比が面白いですが、医師には糖尿病患者さんの顔が「HbA1c」に見えているのかもしれません。
岡崎先生によれば、「予防というと、むし歯や歯周病の予防を思い浮かべるだろうが、泣きの予防も立派な予防である」ということ。大人であっても、糖尿病外来が終わった後、心の中で泣きながら帰途につく方がいらっしゃるかもしれません。
“心の貯金と泣きの予防”、健康に関わる者すべてに、深く深く響く言葉ではないでしょうか。