臨床検査ガイド 2013〜2014:HbA1cの解説

文光堂が出版する”臨床検査ガイド“は、医療技術者向けに様々な検査方法を、1000ページ以上のボリュームで解説している専門書です。

これまで、数年に一度は改訂されてきた医学書界のベストセラーですが、私は前回の改訂時からグリコヘモグロビンA1c (HbA1c)の項目を担当させて頂いており、このたび発売された最新版(2013〜2014年版)のために、加筆修正を行いました。

血糖値は、お腹がすけば下がりますし、ご飯を食べれば上がりますから、食事の影響を大きく受けてしまうという、致命的な弱点があります。このため糖尿病外来では、血糖値の変動を平均して数値化する”血糖の物差し“として、グリコヘモグロビンが使われています。

ヘモグロビンは私達の赤血球中に存在する酸素の運び屋ですが、血糖が高いとヘモグロビンの一部が変性し、糖化ヘモグロビン(グリコヘモグロビン)に変化します。ヘモグロビン全体の中で、糖化ヘモグロビンが占める割合が、HbA1c (単位は%)であり、過去2〜3ヵ月の血糖値を平均した指標とされています。

HbA1cは、日本だけでなく世界中で利用されていますが、測定方法が地域によって、バラバラであるという問題がありました。

日本は、これまでJDSという方法を用い、HbA1cを高精度で測定していましたが、米国はNGSPと呼ばれる方法で計測しており、両者の間には約0.4%の差が存在しています。

昨年から、HbA1cの値が0.4%高くなった理由は、JDSをNGSPに合わせるためですが、どうして両者の間に0.4%の差が存在するのでしょうか?日本の検査精度が悪いのか、はたまた米国の測定方法に問題があるのか。5ページという限られたスペースでしたが、歴史背景まで含め、その理由を解説しました。

草木萌動

“お椿さん”が終わった後も寒い日々が続いていましたが、急に気温が上がり、今日はまるで小春日和のようです。

普通のカレンダーでは、2月28日は「2月の終わり」に過ぎませんが、旧暦は、今日が七十二候の「草木萌動」にあたることを教えてくれます。

萌えの字は、訓読みで”きざし”。草木の芽生えを意味しています。草木萌動は、「そうもく、きざしうごく」と読み、”陽気に誘われ、草木が芽を吹き始める”時節を意味しているのです。

ということで、早速カメラをもって外に出てみました。これはクリニックのエントランスで皆様をお迎えしてくれている木々ですが、ぱっと見は、冬枯れしているだけのように見えます。

でも、近づいてよく見てみると・・・

枝の先々に膨らみはじめた蕾がみられ、一部はすでに芽吹いていました!

まさしく、先日書いた「冬天暖景」の通り。寒い冬の季節の間、お日様の光をしっかり受け止めながら、春の芽吹きを待っていたのですね。

糖尿病ケア 糖尿病食事療法まるごとガイド

糖尿病ケアという、糖尿病療養指導士向けの専門雑誌がありますが、このたび春季増刊号として「糖尿病食事療法まるごとガイド」が発刊されました。

本書の中には「糖尿病以外の疾患をもつ患者さんへの指導」と題する章があり、私はこの中の”肥満がある2型糖尿病患者さん“と”肥満がある1型糖尿病患者さん“の執筆を担当させて頂きました。

それぞれ6ページと7ページを割き、2型糖尿病と1型糖尿病の背景にある病態を踏まえながら、指導にあたり留意すべきポイントをご紹介しています。

私が日頃の診察で最も大切にしていることのひとつは「共感」ですが、このためには訴えのひとつひとつに対して、「そこには理由がある」と捉える姿勢が不可欠です。

血糖値が上がる背景には、単なる食べ過ぎだけでなく、遺伝的な素因、精神的なストレス、様々な問題が隠されています。また、1型糖尿病の患者さんで、命に関わるような重症の低血糖が起きるのは、なぜなのか?

今回の記事には、これらの問いをプロフェッショナルとして受け容れ、答えるために必須となる知識を添えたつもりです。

こねっと通信に妊娠糖尿病のお話を寄稿しました

NPO法人子育てネットワークが発行されている、”こねっと通信“という会報誌があります。年4回、愛媛県内の若手ママに向けて、一万部を無料で配布されているそうです。

会報誌の中に「あなたのまちのお医者さん」というコーナーがあるのですが、昨年発行されたリビング松山の記事をご覧になった、事務局の方からご依頼を受け、2月20日号(Vol.54)に私の寄稿記事、”妊娠糖尿病にならないために“が掲載されました。

実は、妊娠糖尿病は糖尿病ではありません。「え、どういうこと?」と思われた方は、是非この記事をご覧になってください。バックナンバーの入手方法は、こちらに掲載されています。

東京にて

2月9日から10日は、研究会参加のため東京にやってきました。10日の朝は五月晴れ、美しい青空と皇居に目が癒やされます。

研究会終了後、フライトまでの空いた時間をぬって、銀座までやって参りました。お目当ては、フェルメール・センター銀座で開催されている”あっぱれ北斎!光の王国展”。葛飾北斎の手になる、「冨嶽三十六景」46点と「諸国瀧廻り」8点のレプリカが一同に展示されていると聞き、やってきた次第。

原寸大や拡大したものなど、大小様々なコピーが額縁に入れられて展示されています。入館前は精緻なレプリカを期待していたのですが、どうもこの企画は色調再現に重きを置いているようで、版画の命ともいえる”線”は、ぼんやりとにじみ、画に締まりがありません。

せめて、一枚でもオリジナルを展示し、味わいの違いを比較してほしかったと思います。若かりし頃、ヨーロッパで歌川国芳の版画展覧会を見たことがありますが、あの感動は今でも忘れられません。

少し残念な面持ちで歩行者天国に出てみると、どこからともなく、かすかな鈴の音が聞こえます。糸のように細い音色をたどっていくと、一人の托鉢僧が静かに立っておられました。

都会の喧噪の中、そこだけ時間が止まっているような、不思議な光景。人通りも多く、少し気恥ずかしかったのですが、御布施をし、読経して頂きました。お声はよく聞き取れませんでしたが、一瞬雑踏のざわめきが消え入ったような気がします。

静かなお姿を写真に納め、東京を後にしました。